輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁

青空文庫

折々、廂を打つ落葉の音が、雨かとおもう錯覚を起させる。

雨。雨を連想すると、主殿も兵九郎も、同じ思いに沈み入った。

――やがて二た月前にもなる。あの夜も真ッ暗な雨の夜だった。

養父の忠右衛門や、許嫁のお縫もおいて、赤坂のやしきを出て行った市十郎の――あの悪魔に憑かれた市十郎の姿が――その時の悲雨や悲涙のむせびを交ぜて、今でも耳によみがえってくる。惻々と、胸を傷くしてくる。

(この年の暮を、どこをどううろついていることか。悪い仲間に、深入りしておらねばよいが。そして、此家の戸を叩いて、悔いてでも来ればよいが)

憎い弟、憎い奴と、口に出せば、たちまち憤りとなるが、心の底では、主殿も兵九郎も、――こう祈る気もちに変りはなかった。

「あまり夜更けぬうちに、おいとまいたします。どうやら雪でも催しそうな寒さ。叔父上も、この歳暮へきて、お風邪でも召さないようにお気をつけ下さい」

「もう帰るか。……ひき止めても、何やら今は、おたがいに心も楽しまん。わしは達者だが、公務のひまがあったら、折々、赤坂を見舞ってやってくれよ」

「おことばまでもございません。では……」と、兵九郎に送られて、主殿は、玄関を出た。