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だいぼさつとうげ
大菩薩峠13
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠13(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 349,705 字 · 678 頁
いくら非常の場合にでも、救助のために投げ出すにしては、これはあんまり過ぎものだと感じないわけにはゆきません。
大抵の場合、こういう時に施しに出すのは、着古したものか、洗いざらしとかいう種類にきまっているのに、こんな結構な着物を、羽織から揃えて一重ねも投げ出そうというのは、少し気前がよすぎてはいないかと、お雪ちゃんが、そこへ気を取られたものですから、いったん、起き直ったのを坐り直して、右の一重ねの衣類を手に取って、つくづくと見たものです――つくづくと見ているうちに、お雪ちゃんの唇の色が変りました。
「先生」
あわただしく、寝ている、竜之助を呼びかけたものです。
「何です」
「ああ、怖い、ちょっと起きて下さい、あなたに、見ていただかなければならないものがあります……といって、あなたはお見えになりますまいが、この重ねの小紋縮緬の着物をごらん下さい、これはまあ、あのイヤなおばさんの着物に違いありません。違いません、違いません、わたしがたしかに見た通りの品です、それが、ここに来ておりますよ。どうして、誰がこの着物を……」
着物が蛇にでもなったように投げ出しました。