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だいぼさつとうげ

大菩薩峠13

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠13(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 349,705 字 · 678 頁

青空文庫

「おや?」

がんりきの百蔵もギョッとして、瞳を定めてそれを見る。

さいぜんからそこで我々を見つめていた人影一つ、荒涼たる焼野原を透して、宮川の外れから白山山脈が見えようというところ、月の晩ではないのに、その輪郭が白くぼかしたように浮き上っている。

「おや……」

がんりきは、たじろぎながらその物影を篤と見直すと、覆面をして、着流しのままで、二本の刀を帯びて、じっとこちらを睨んでいる。

こいつは辻斬だ! はあて、飛騨の高山でも、辻斬が商売になるのかな。

ちょうど、下に置いてあった屑屋のがんどう提灯を、がんりきの百が手にとって、その異形の者にさしつける途端、

「あっ! いけねえ」

すさまじい音をして、がんどう提灯が、数十間の彼方にケシ飛ぶと共に、がんりきの百も共に、数十間ケシ飛びました。

同じケシ飛んだのではあるけれども、がんどうの方は飛んだところへ行って留まったが、がんりきの方は横っ飛びに飛んだまま、街道の道へ出ると、一層の速度を加えて、無二無三に走りました。

そのあとで、

「助けて――」

屑屋もまた、がんりきと同じようにケシ飛ぼうとしたけれども、それは無理で、ドウと音がして、やがてザンブと水が鳴って、そうして助けて! という声が地の下から聞えたのは、焼跡のそばの、崩れた井戸へ落ち込んだものと見える。