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だいぼさつとうげ

大菩薩峠13

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠13(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 349,705 字 · 678 頁

青空文庫

苟も祖先以来、徳川家の禄を食んで、その旗下の一人として加えられて来た身であってみれば、忠義だの、崇拝だのという心が有っても無くても、ははあ、ここは「東照宮」であったな、と感じないわけにはゆかなかったのでしょう。

家康という不世出の英雄があって、三百年の泰平があり、そのおかげで日本国の――少なくともこの江戸の繁昌があり、我々旗本の安泰と、驕慢とが許されたのだ、その本尊様の霊を祀るところがここだ――

主膳の頭巾に、知らず識らず手がかかったのは、うつらうつらでもここまで来てみれば、さすがに素通りはできない――という習慣性に駆られたようなものでしょう。それとも、敵に後ろを見せるのが癪だ、という反抗気分かも知れません。

「よしよし、鬼の念仏だ、久しぶりで東照権現に参詣して行っても、罰は当るまい」

こう思って、頭巾を外しながら東照宮の神前まで、神尾主膳が進んで行きました。

この鋪石の上で、主膳はふと、さんざんに引裂かれた一つの御幣の落ちているのを認めました。

その御幣も容易なものではない、重い由緒ある神前でなければ見られない御幣である。それが無残に引裂かれ、打砕かれて、あまつさえ、土足で蹂躙してある痕跡が充分です。