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だいぼさつとうげ

大菩薩峠13

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠13(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 349,705 字 · 678 頁

青空文庫

二

茂太郎は、月に乗り得ないとは信じていない。こうして、走りかかれば、早晩、月に抱きつくことができると信じきっているが――いくら走っても、月の方へ走ると海になってしまう。海は深くして広いことを知っている。

月には至り得ることを信ずるけれども、海は越えられないということを知っている。

そうして、月をめがけて一散に走って、海に至るとはじめて、茂太郎が呆然として自失してしまいます――今宵もまた、海に妨げられて、月に至ることを得ずして浜辺を帰る清澄の茂太郎は、

遼東九月、蘆葉断つ

遼東の小児、蘆管を採る

可憐新管、清にして且つ悲なること

一曲、風翻りて海頭に満つ

海樹簫索、天霜を降らす

管声寥亮、月蒼々

白狼河北、秋恨に堪へ

玄兎城南、皆断腸――

この詩を、高らかに吟じはじめました。

これは出鱈目でもなく、即興の反芻でもなく、岑参の詩を、淡窓の調べもて、正格に吟じ出でたものであります。そうして、この詩句と吟調とが、田山白雲によって、茂太郎に教えられているというよりは、白雲が興に乗じて吟じ出でたのを、茂太郎が、その音楽的天才の脳盤の中に、早くも取込んでしまったそのレコードが、偶然、このところに於て、廻転し出したと見ればよいのです。