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だいぼさつとうげ

大菩薩峠13

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠13(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 349,705 字 · 678 頁

青空文庫

「いいですか、せっかくの名作を汚してもかまいませんか」

「どうぞ御遠慮なく」

と白雲が、やはり如才なく言いました。

「では、ひとつ」

用意せられた筆に墨を含ませて、白雲の描いた「勿来の関」の上の空白を睨んでいる目つきを見て、白雲が、こざかしい振舞かなと思いました。

このぐらいの年配で、たとえ旅の貧乏絵師とはいえ、いやしくも他人の描いたものへ、賛をと望まれても、一応は辞退するのが礼であろうのに、いっこう、辞退の色もなく引受けて、少しもハニかむ色なく、筆をぶっつけようとする度胸だが、盲蛇だか、それを白雲は、小癪な奴だという気がしないでもありません。よし、まあ、やらせてみろ、下手なことをしやがったら、その分では置くまい、白雲の手並を見せてやる、それからでよい。

若造――やってみろ、という気構えで傍らから白雲が悠然として、酒杯をふくんで見ているうちに、筆を取って、画面を見ていた右の若い武士は、ズブリと硯田にそれを打込んで、白雲の揮毫の真中へ、雲煙を飛ばせてしまいました。

「あっ!」

と白雲が酒杯を落そうとしたのは、憤慨のためではありません。

その竜蛇を走らすが如き奔放なる筆勢――或いは意気に打たれたとでもいうのでしょう。