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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 頁

青空文庫

威徳院の客殿に入ってから、行祐がこう伝えると、光秀は黙ってうなずいて見せた。そして一杯の白湯を飲み終るとすぐ、

「何よりはさきに氏神に祈願し、愛宕権現に参詣いたしたい。まだ夕方の仄明るい間に」

と、案内を求めた。

道は掃き清めてある。禰宜は先に立って、拝殿の階を踏み、神あかしを燈した。

光秀は、額ずいた。やや久しいあいだ祈念をこらしていた。

榊の風が、三度、颯、颯、颯と彼の頭上を払った。神官はまた彼の前に神酒の土器を置いた。

光秀は、その後で、

「当社は、火神を祭ると、伺っておるが、左様であるか」

「仰せのとおりにございます」

「火神には、火のもの断ちをして祈れば、霊験疑いなしと聞くが如何であろう?」

「はい、はい。――仰せの通り古来からよくそのように申し伝えられておりますが」

と神官は、光秀の質問には、明答を避けながら、その問いを、却って光秀へ向けて云った。

「火避け火断ちをすれば、火神の霊験で必ず願望が成るとは、里人の信仰ですが、そのような伝説は、いったい何から由来したものでございましょうか」

巧みに話題を転じて、神官のはなしは、いつのまにか神社の縁起に及んでゆく。