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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁

青空文庫

猛獣や毒蛇に脅かされることもあった。夜は洞穴に寂寞として眠った。彼と同じような心願を持って白竜山へ来た行者の中には、麓を彷うているうちに精根が尽きて倒れる者もあった。そうした死骸に往き当ると穴を掘り、野花を供えて懇に埋めてやった。

大森林、大谿谷、奔湍、風の音、雨、山をつんざく雷、時雨、無心の空の雲、数箇月に渡る雪の世界。こうした巡礼の日が続いていると、夢ともなく現ともなしに山上を鳥のように駆け走る仙人の姿を見るようになった。

三たび目の野草の花が咲いた。彼は某日水を飲むために谷川の岸に出た。狭い流れではあるが滝のように流れ落ちる水が岩にぶっ衝って凄じい光景を呈していた。彼はそろそろと岩の角を這いおりて水際に近づこうとした。前岸の巨木からさがった鉄鎖のような藤葛が流れの上に垂れて、その端が水の勢で下流に靡き、また放ね返って下流に靡いているのが見えた。その藤葛が横に靡けば、前岸に聳った平らかな岩の出っ端に往かれそうである。彼はそれに眼をつけた。

背後の山に落ちかけた夕陽の光が、紅葉しかけた前山の一角を赤赤と染めていた。彼は水際におりるのを止めて藤葛を見つめていたが、どうもその藤葛に山上へ登る秘密があるように思われて来た。