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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁
それは今のさき洋食屋にいた女であった。謙作は怪しい洋服の男が口にした天華と云う名をちょと思いだした。女は頭をさげて見せた。
「今、失礼いたしました、ちとお立ち寄りくださいまし、お茶でもさしあげましょう」
謙作は時間のことは心配しなかったが、女の素性が判らないうえに、一度位それも洋食屋などで顔を合せた位の人の内へ慣れなれしく入って往くのも気が咎めるし、また壮い女があまり慣れなれしくするのもうす鬼魅がわるいので躊躇した。
「おあがりくださいまし、よ、他に何人も御遠慮なさる者はいませんから」
謙作はふと考えた。この女の物ごし風体はどうしても良家の子女じゃない、女優のあがりか歌妓のあがりである、それに一人でおると云うのは、旅にでも来ているのか、それともと考えて、金のある男を待っているある種の女の群に思った。彼は船にはまだ時間があると思った。
「さあ、どうぞ」
「では、ちょっと失礼しましょうか」
謙作は煙草の喫みさしを捨てて入口の方へ注意した。門燈のぼんやりと燭っている入口のガラス戸がすぐ見えた。
「そこの入口を入って、右側の階段をおあがりくださいまし、四つ目の室でございます」