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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁

青空文庫

「未熟な身が、何時までもこの霊窟におりますのは勿体のうございますから、お別れいたしたいと思いますが、このうえとも御指教を願います」

「それでは、今日は帰るがよかろう、そこまで見送ってやろう」

寿真は河野を伴れて岩屋を出た。そして二人で山を降って往った。一里あまり往って、深林を出放れると渓川が来た。左右には高い山が天空を支えて聳えていた。渓には夏の夕陽があった。寿真は片手を出して渓下の方に指をさした。

「この渓川に沿うて、下へ下へと往って、あの山のはずれを」

と、云って渓の下の方に見えている左側の尖んがった峰に指をさした。その指が大きく光って見えた。

「あの山はずれを、西へ西へと往けば、人の通る路が来る」

河野は頷ずいた。

「これから、わしの処へ来たくなったら、ここまで来て待っておるがいい、わしが迎いに来てやる」

河野は寿真の方をおりおりふり返りながら山をおりて往った。最後にふり返った時には、一沫の雲が寿真を覆うように見えていた。

河野はその晩渓の落ち口で持宿をした。翌日は吉野路を通って、五条橋本など云う処を経てその夜は籠の鳥と云う山の辻堂で一泊し、十日になって紀州路から泉州の牛滝と云う処へ越え、それから葛城山へ往った。