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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁
主人は往くと云ったのを平生のとおり貝塚へ往くことだと思った。
「長い間の行でございましたから、後の養いが大事でございますよ」
「有難う」
河野はこう云ってそのまま机の上に俯向いた。主人は室を出て往ってしかけてあったちょとした用事を済ますと、何かまだ他に用事はあるまいかと思って河野の室へ顔をだした。河野は机の上に俯向いたままじっとしていた。氷はと見ると一つの氷のコップは空になって、もう一つの方は一口ぐらい喫んだようにちょっと上の方が隙いていた。
(睡っておられる、長い間の行で体が疲れているだろう)
主人は跫音をして驚かしてはならんと思ってそっと室を出て往った。しかし、河野のことが気に懸るのでまた暫らくして来て見たが、河野は初めのように俯向いていた。もしあれから氷を喫んだのではあるまいかと思ってコップに眼をやったがコップは元のままであった。
(やっぱり疲れておるから、うとうととなされておるだろう)
主人はまた外へ出て往ったが、何だか河野の容子が平生と違っているように思われるので、また引返えして来て、
「先生、先生」
と声をかけた。返事もなければ体も動かさない。