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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁
尊はその時分、神仙から授かった秘法や禁厭で附近の人びとの病気などを癒していた。尊の噂が高まってくるとともにその門人となる者もできた。太美の万彦もその弟子の一人であった。尊は時どきその門人を伴れて熊山へ往った。火のものを絶って尊に跟いて往った門人達は、熊山の山頂で神仙の奏する音楽を聞くことができた。神仙の形は見えなかったが音楽は近ぢかと聞えた。尊は門人達に、「熊山、吉野山、伯耆の大山などには仙境があって、吉野山の神仙と、熊山の神仙とは常に往来している」と話したこともあった。万彦は某夜尊に伴れられて平生のように熊山へ往って音楽を聞いた。ところで、その晩の音楽の中に一つ拙い音楽があった。万彦は不審に思うて尊に訊いた。尊も不思議に思っていたから神仙に伺うた。神仙は尊の問に答えて、「近比人間界から来た新仙があって、まだ音楽に熟していないのが混っているからである」と云った。尊は、「それは何という人で、何時この仙界へ来られたか」と訊いた。「河野久と云う者で、十四五年前に入って来た」と神仙は答えた。
万彦の話に耳を傾けていた宮地翁は、河野久の話を聞くと、もし万彦が己と河野久とのことを知っておって、己を喜ばすために作りごとを云うのではないかと思ったので、そのままに聞き流してその日はなにも云わなかった。