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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁

青空文庫

「まあ、そんなことをおっしゃらないで、こんな夜更けに何の御用がおありになりますの、たまには遅く往って、じらしてやるがよろしゅうございますよ」

女はコップを持ったなりに下顋を突きだすようにして笑った。讓もしかたなしに笑った。

「さあ、もうすこしおあがりなさいましよ」

讓は後の酒を一口飲んでしまってコップを置くと、腰をすかすようにして、

「折角ですけれど、ほんとうに急ぎますから、これで失礼します」

女はコップを投げるように置いて、立って来て讓の肩に双手を軽くかけて押えるようにした。

「もう、妹も伺いますから、もうすこしいらしてくださいまし」

讓の肉体は芳烈にして暖かな呼吸のつまるような圧迫を感じて動くことができなかった。女の体に塗った香料は男の魂を縹渺の界へ伴れて往った。

「何人だね、今は御用がないから、あちらへ往ってらっしゃい」

女の声で讓は意識がまわって来た。その讓の頭に己を待っている女のことがちらと浮んだ。讓は起ちあがった。女はもとの椅子に腰をかけていた。

「まあ、まあ、そんなに、お婆さんをお嫌いになるものじゃありませんわ」

女の艶めかしい笑顔があった。