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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁

青空文庫

「あ」

「どう、はっきりおっしゃいよ、まだ御酒がたりないじゃないの」

酒と云われてみると佳い気もちになっていた。

「もう、酒はたいへん」

「でも、はっきり返事ができないじゃないの」

広巳はそれを微笑で応えた。

「どう」

「もう、たいへん酔いました」

「酔ってるなら云えるじゃないの、それともこんなお婆さんとお朋友になるのは、厭」

「そ、そんな」

広巳はあわてた。

「それじゃ、なってくれるの」

「なります」

「なってくれるの、うれしいわ、ねえ、それじゃわたしに盃をくださいよ、かための盃をしようじゃないの」

「は」

広巳は瓦盃を手にした。瓦盃には酒がすこしあった。広巳はそれを飲んで盃洗ですすごうとしたが、すすぐものがないので躊躇した。

「それをいただきますよ、それがいいのよ」

「でも、これは」

「いいじゃないの、貴郎のめしあがったものじゃないの」

女の手が延びて来たので広巳はしかたなしに瓦盃をだした。

「それじゃ、貴郎がお酌をしてくださいよ」

「は」

広巳はきまりがわるいけれども、そうしろと云われてみればしないわけにはゆかない。広巳は銚子を持った。

「ちょっと」

女が心をおくので銚子の手をひかえた。