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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁

青空文庫

土室の暗い処に三十前後の店員らしい男の眼が光っていた。

「今晩は」

「何方さまでございましょう」

「わっしは、山田から来たのだが」

お杉は内心恐れていた山田の使に来られてぎくとした。お杉はべったり坐った。

「や、やまだ」

「そうだよ」

「何か御用で」

「あの、旦那からだが、理由は覚えがあるだろうから何も云わないが、今日かぎり、出入をしないようにって、そう云いつかって来たのだが」

お杉は何も云えなかった。

「わっしは、何も知らないが、それだけ云えば、判ると云うのだから、それを云いに来たのだ」

「そう、ですか」

「判ってるかね」

「判りました」

「それじゃ、これで」

「まあ、いいじゃありませんか」

「まだ一軒まわる処がある、それじゃ」

壮い男はそのまま出て往った。お杉は暫くそこに坐っていた。長吉が茶室から呼んだ。

「おい、お杉」

お杉は返事をしなかった。

「おい、お杉」

お杉はふいと起って茶室へ引返した。長吉は待っていた。

「山田さんのお使らしいが、なんだね」

お杉は黙って坐り、盃を持って飲みさしの酒をぐっと飲んだ。

「何の御用だね」

「やかましいや」

長吉はびっくりしたように潰れている眼の瞼をびくびくとさした。