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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《日本怪談大全 第一巻 女怪の館(がまのち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,678 字 · 394 頁

青空文庫

しかし、それでも、たしかに彼の女であると思ったので、往ってしまわれるのが惜しくて、往くともなしに跟いて往った。

巷の中には、軒燈が二つ三つしか見えていなかった。女は小刻みに歩いていた。二つ目の軒燈の光っている処には、右へ折れるまた小さな巷があった。女はその巷を右へ折れた。その巷には一つの軒燈もなかった。下には泥溝板が敷いてあった。私の下駄はその泥溝板に触れる度にがたがたと音がしたが、女は空気草履でも履いているのか、なんの音もしなかった。住居の門口らしい微暗い燈の射した処が、右側に三処ばかりあった。女はその最後の微暗い燈の家へ、門口の格子を開けて入り、建てつけの悪いその戸をガシャリと閉めてしまった。

私は二間ばかり離れていた。その時も私は、思い切って声をかけようとしていたところであった。私は残念でたまらないので、その家へ往って男らしく聞こうと思ったが、対手が壮い女であるから、ちがっていては、そこらあたりに好くある連中といっしょにせられると云う恐れが頭を離れないので、それが私を萎縮さしてしまった。しかし、その女に深い興味を感じている私は、よう諦めてしまわずに明日にでも会社の帰りに、公然と寄って訪ねて見よう、その方が好いと思いだした。