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わすれえぬひとびと

武蔵野

国木田 独歩

線上閱讀国木田 独歩《武蔵野(わすれえぬひとびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 94,018 字 · 192 頁

青空文庫

※(始め二重括弧、1-2-54)三※(終わり二重括弧、1-2-55)

『七年は経過せり』と自分は思わず独語した。そうだ。そうだ! 七年は夢のごとくに過ぎた。

※(始め二重括弧、1-2-54)三※(終わり二重括弧、1-2-55)

自分が最も熱心にウォーズウォルスを読んだのは豊後の佐伯にいた時分である。自分は田舎教師としてこの所に一年間滞在していた。

自分は今ワイ河畔の詩を読んで、端なく思い起こすは実にこの一年間の生活及び佐伯の風光である。かの地において自分は教師というよりもむしろ生徒であった、ウォーズウォルスの詩想に導かれて自然を学ぶところの生徒であった。なるほど七年は経過した。しかし自分の眼底にはかの地の山岳、河流、渓谷、緑野、森林ことごとく鮮明に残っていて、わが故郷の風物よりも幾倍の色彩を放っている。なぜだろう?

『月光をして汝の逍遙を照らさしめ』、自分は夜となく朝となく山となく野となくほとんど一年の歳月を逍遙に暮らした。『山谷の風をしてほしいままに汝を吹かしめよ』、自分はわが情とわが身とを投げ出して自然の懐に任した。あえて佐伯をもって湖畔詩人の湖国と同一とはいわない、しかし湖国の風土を叙して

そこには雨、心より降り、晴るる時、一段まばゆき天気を現わし、鳴らざりし泉は鳴り、響かざりし滝は響き、泉も滝も、水あふるれど少しも濁らず、波も泡も澄み渡り青味を帯べり、