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わすれえぬひとびと

武蔵野

国木田 独歩

線上閱讀国木田 独歩《武蔵野(わすれえぬひとびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 94,018 字 · 192 頁

青空文庫

を微漠煙浪のうちに抹し去る、僕は少年心にもこの美しい景色をながめて、恍惚としていたが、いつしか眼瞼が重くなって来た。傍らを見ると叔父さんは酒がまわったか銅色の顔を日の方に向けたままグウグウといびきをかいていた。

この時、小藪を分けてこの方に近づく者がある、僕はふとその方を向くと、すぐそこの小藪の上に枝のある大きな鹿の角が現われていた。鹿だ! 僕はどうしようかと思った。叔父さんを起こそうとしたがやめた、起こすと叔父さんがきっと『何だ何だ』と大きな声を出す、鹿が逃げてしまう、僕は思わず、叔父さんが小松に立てかけて置いた銃をソッと把った。

鹿は少しも人のいるに気が付かぬかして、小藪の陰をしずかに歩いてこなたに近づいて来た。手をのばせば銃端が届きそうなところに来て立ち止まった。草藪の陰でその体はよく見えないが角ばかりを見たところで非常な大鹿らしい。

僕の胸はワクワクして来た、なぜ叔父さんを起こさなかったかと悔やんだがもう遅い。十二の少年が銃を把って小馬ほどの鹿に差し向けたさまはどんなにおかしかっただろうか。

しかし僕は戦慄う手に力を入れて搬機を引いた。ズドンの音とともに僕自身が後ろに倒れた。