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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
線上閱讀国木田 独歩《武蔵野(わすれえぬひとびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 94,018 字 · 192 頁
『村に出た時はもう日が暮れて夕闇ほのぐらいころであった。村の夕暮れのにぎわいは格別で、壮年男女は一日の仕事のしまいに忙しく子供は薄暗い垣根の陰や竈の火の見える軒先に集まって笑ったり歌ったり泣いたりしている、これはどこの田舎も同じことであるが、僕は荒涼たる阿蘇の草原から駆け下りて突然、この人寰に投じた時ほど、これらの光景に搏たれたことはない。二人は疲れた足をひきずって、日暮れて路遠きを感じながらも、懐かしいような心持ちで宮地を今宵の当てに歩いた。
『一村離れて林や畑の間をしばらく行くと日はとっぷり暮れて二人の影がはっきりと地上に印するようになった。振り向いて西の空を仰ぐと阿蘇の分派の一峰の右に新月がこの窪地一帯の村落を我物顔に澄んで蒼味がかった水のような光を放っている。二人は気がついてすぐ頭の上を仰ぐと、昼間は真っ白に立ちのぼる噴煙が月の光を受けて灰色に染まって碧瑠璃の大空を衝いているさまが、いかにもすさまじくまた美しかった。長さよりも幅の方が長い橋にさしかかったから、幸いとその欄に倚っかかって疲れきった足を休めながら二人は噴煙のさまのさまざまに変化するをながめたり、聞くともなしに村落の人語の遠くに聞こゆるを聞いたりしていた。