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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
線上閱讀国木田 独歩《武蔵野(わすれえぬひとびと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 94,018 字 · 192 頁
げに平壌攻落せし将軍もかくまでには傲りたる色を見せざりし。
二郎が苦笑いしてこの将軍の大笑に応え奉りしさまぞおかしかりける。将軍の御齢は三十を一つも越えたもうか、二郎に比ぶれば四つばかりの兄上と見奉りぬ。神戸なる某商館の立者とはかねてひそかに聞き込みいたれど、かくまでにドル臭き方とは思わざりし。ドル臭しとは黄金の力何事をもなし得るものぞと堅く信じ、みやびたる心は少しもなくて、学者、宗教家、文学者、政治家の類を一笑し倒さんと意気込む人の息気をいう、ドルの文字はまたアメリカ帰りの紳士ちょう意をも含めり。詳しき説明は宇都宮時雄の君に請いたもうぞ手近なる。
いずこまで越したもうやとのわが問いは貴嬢を苦しめしだけまたかの君の笑壺に入りたるがごとし。かの君、大磯に一泊して明日は鎌倉まで引っ返しかしこにて両三日遊びたき願いに候えど――。われ、そは御楽しみの事なるべし、大磯鎌倉は始めてのお越しにや。かの君さりげなく、妹には始めての遊びになん。ああこの時、わが目と二郎の目とは電のごとく貴嬢が目を射たり、蒼ざめし貴嬢が顔はたちまち火のごとく赤く変わり、いそぎハンケチもておおいたまいし後はしばしわれらの言葉も絶えつ。