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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁

青空文庫

「そんな元気はないようだよ」

「ないようだじゃ心細い。金吾に会って、そらとぼけながら口裏を引いて見りゃいいに」

「それをやろうとしたのが大しくじり、会わせてくれというと、いきなりお粂が巽あがりに怒りやあがって」

「意気地がねえな、女に水をぶッかけられて引き退ったのかい」

「なあに、水をかけた奴は率八だがね」

「どっちにしても褒められた話じゃねえ。だがお粂の所に匿われていても、金吾が病気といやあ安心だが、また一ツいけねえことが降ってわいたな」

「今行った、徳川万太郎かな」

「そうよ、あれを馬春堂、お前は尾州の若殿徳川万太郎と知って、金吾の居所を教えてやったのか」

「ウム、葵のくずし紋や物いい人品、尋ね物と来た時に、すぐそれだなと感づいていた」

「どうする気だ! 飛んだことをしゃべったじゃねえか。もし万太郎が金吾の体を取っ返して見ろ、今度は二人がかりで紛失物を探しながら、この伊兵衛の命を狙け廻すにちがいねえ」

「なるほど」

馬春堂はお粂に対する腹いせに、金吾の居所を指してやったのですが、いわれてみると伊兵衛の言葉がもっともなので、

「こいつは、悪い易を立ててやった」と、悔いを噛んで目をそらしました。