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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁

青空文庫

と――その目の前の往来を掠ッて、十四、五人ずつ二組ばかりの捕手と組子が、手に手に十手をしのばせて、忍川の川尻へ真ッ黒になって馳けて行く――。

「やっ、捕手が廻っている!」

と馬春堂は腰をうかして、宵の町に黄色く舞った砂ぼこりの行方へ眼色を変えましたが、脛に傷を持つ伊兵衛の挙動も同時にソワソワし出して、

「たいそう仰山な人数だな……こいつは悪くすると、また当座だけでも江戸から足を抜かないと剣呑かも知れねえぞ」

あわてて腰へ煙草入れをさし込み、笠の紐を締め直しましたが、不意に手を出して、

「オオ、それから、お前に預けておいた洞白の仮面箱、あいつを貸してくんねえか」

「持って行くのか」

「おめえに預けておくのは心許ないし、おれが持ち歩いているのも物騒。いッそのこと人目にかからない山の中へでも埋けておいて、それから悠々と夜光の短刀を探しにかかろうと考えているんだ」

「成程……だが伊兵衛、お前はそれについて、これと目星がつくような手懸りがあるのかい?」

「あるものか。見当がついているくらいなら、こんなまごまごしちゃあいない」

「仮面箱を持って行くはいいが、ひとりでうまい事をしちゃあいかんよ、初めから、この馬春堂も半口乗っている仕事だからな」