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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁
昼には、月江が帰って来たのを見たし、今夜はいつもと違って、ばかに陽気な空気が馬春堂にも感じられていましたから、
「こいつは変だ、伊兵衛の助けに来るのを安閑と待ってなんかいると、飛んでもねえことになるかも知れない。ウッカリすると今夜あたり……」
馬春堂は跳ね起きました。
だが、これという計画的な考えもない。ただ、ジッとしていられない恐怖の本能が、彼をして、竹籠をかむキリギリスの如き愚を演じさせる。
そのうちに。
あなたの狛笛、曲や終りけん、ハタと止んで、こんどは能がかりの総囃子が、前よりも、調子高く、大鼓を入れて鳴り出します。
「今夜だ、今夜だ」
馬春堂の意識にも、それだけのことは働いていました。
大陽気になっている今夜の酒宴の隙に逃げ出さなければ、またと逃げ出す機会はない。
窓へ獅噛みついてみたり壁を押してみたり、畳へバリバリ爪を立ててみたり。
――何ぞ知らん、すでにその時には、橋廊下の錠口が四、五寸開いて、スウと、あの世の冷たい風が先生をお迎えに来ているものを。
すウと、錠口をあけて、忍びやかな夜風と共に、中へ足を入れて来た関久米之丞。
真ッ暗な二重壁の廊下を、ミシ、ミシと手さぐりで進みながら、右手に水の垂るような大刀を抜いてうしろへかくし、