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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《江戸三国志(えどさんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 頁

青空文庫

戸棚の上の馬春堂先生、梟のような眼にそれを見て、

(あッ……)

と、水を浴びたようにゾッとしましたが、からくも口を抑えて、その驚きだけはのみ殺しました。

そして、泰然自若――天なり命なりと達観してしまッたように、あぐらをかいて動きません。

けれども、それは真の覚悟ではなく、立とうとしても立てない形、腰が抜けてしまったのでしょう。

「はてな? はてな?」

下では久米之丞、夜具や辺りをなで廻して、

「逃げるはずはないのだが」

と、二、三度、大刀に素振りをくれて、暗の手ごたえを探ッている。

馬春堂は目前の稲妻にいよいよ胆をちぢめて、今はたまらぬと思ったか、不意に――吾を忘れて、内から戸を閉めきッて抑えたので、その音に、初めて居所を知った久米之丞、

「おのれ、そこに居たか」

と、飛びついて来ました。

中では必死。

戸はガタガタと馬春堂の胴ぶるいを揺すッています。けれど、久米之丞には誂え向きです。ここに封じて置いて殺せば、多少、ジタバタしようが声を出そうが、始末におえないことはない。

充分、無駄な戸を抑えさせて置いて、久米之丞は大刀の切ッ先をそこへ向け、力いッぱい刺し入れて、ふすま諸共えぐり廻しました。