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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
「よい息子だ。よい武者として、行く末御用に立てられよう」
逞しい豊麻呂の後ろ姿にも、日野俊基は、すぐそう思う。――それは彼が、親の散所ノ太夫義辰にも増して、多年、至嘱しているものだった。
「なるほど、ここはよい眺めよの。――葛城の峰々、河内平野の水、えもいわれぬ」
「すぐ下の流れは、石川です。彼方の屋根は古市や道明寺。その辺から無数の水をあわせて、大和川になりまする」
「思い出した。“古今六帖”のうちに」
と、俊基は微吟する、
河内野や
片敷山の片山に
ゆきか花かと
波ぞよせくる
「……ごぞんじか」
「いえ、文事はとんと」
「むりもない、由来、武門のお家柄だ」
「ところが、ここ数代のわが家は、本来の面目を次第に失って、あらぬ家職に変ってまいりました。散所ノ長者とか、散所ノ太夫などと、土地の民からは、領主のごとくあがめられ、富財も積んでまいりましたが、祖先に河内源氏石川ノ義基を持つ武門のほこりは色褪せてしまい、これでよいのかと、折には、みずから問うて悩みまする」
「そのお悩みはもっともだ。まことの生命は、財宝などで生きがいを覚えられるものではない。まして和殿のごとく、生れながら財宝の中にあれば、なおのこと」