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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

ようやく、彼もすこし変だと感じ出したらしい。それに足の痺れにもたえかねてきた。

「おかしいぞ。……いかがなされしか」

考えてみれば丑満時である。帝もご熟睡のさなかであろう。そのため、さっきの妃も、御夢をおどろかしかねていることでもあろうか。

彼は、あくまで善意にとったが、しかしお待たせしてある大覚ノ宮も気がかりだった。

「そうだ、この間にお呼び入れしておいた方が、宮もご安心なさろうし、時も費えぬ」

すぐ返って来る印として、彼はわざと、そこへ竹ノ子笠をおいて去った。いや走ッた。

ところが、先に大覚ノ宮を待たせておいた桜の大樹の蔭にも、またその附近にも、宮の姿は見あたらなかった。――はっと、彼は不吉な感に振り廻されたが、声をあげて、御名を呼ぶわけにもゆかない。

「さては、余りに自分の来るのが遅かったため、宮にもどこかそこらを彷徨うておいでなのか」

彼はついおろおろした。花明りを歩き迷った。

と。これは当然、警固の眼にふれないわけはない。

「出合えッ」

どこかで鋭い声がした。

つづいて「曲者っ」と喚いて来るのや、

「またか!」

と言ったような声もする。

高徳は、行動の意識もなく跳躍していた。