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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
「じゃあ、なるつもり」
「尼さんにはなりません。子どもがかわいそうですもの」
「お藤さん子があるのかい」
「命松さんより三ツ四ツ年下ですけれど」
「どこへ預けておいたの」
「三河の田舎に」
「だってお藤さんは近江なんだろ。どうしてそんな遠くにおくのさ。ああ分った。それで毎晩ベソをかいてるんだな」
「ホホホホ。そうよ」
「雀の子では、やっぱり駄目かい。そんなに、おらの雀は、お藤さんに馴れちゃッたけど」
「いいえ、雀も可愛いの」
庵の裏で、洗い物を干している彼女と、その側で、命松丸がしゃべっている声だった。――書斎の兼好は、頬杖のまま、眼は書物に落していたが、耳はそっちへ預けていた。
兼好も枯木ではない。ないどころか、四十男の性も旺なはずである。
独り書斎にいても、自然、藤夜叉の起ち居や匂いには、ふと心を奪られがちだった。
「なにも自分だけのように、辱ずるには当らん。煩悩は人すべてのものだ」
彼は、しいて取り澄ます。
それにしても、夜々、彼女の閨へ夜這いを思い立ちながら、抑えに抑えて、夜明けを待つのは苦しかった。益なき疲労を、昼にはどこかで悔やんでいた。
「はて、ばかな」