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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
夜半ごろから小雨ともいえない小雨がシトシト天地を濡らしていた。
高氏は、床几を退いて、神祇門の廂の下に、つかのまを、まどろんでいたが、
「おうっ、深草あたりだ」
「伏見、山崎、竹田の空までも、真っ赤に見ゆる」
と、口々に言い騒ぐ兵の声に、ふと目をさまして見ると、なるほど、洛外の西から南へかけて、燎原の火ともいえる炎の波がえんえんと横に長く望まれた。疑いもなく、友軍の千種、赤松の二タ手が、互いに、六波羅突入の一番の功を争いあっているものと思われた。
みじか夜だ。すぐ明けてくる。
八幡、山崎、竹田、宇治、勢多、深草、法勝寺などにわたる夜来からの赤い空は、ただまっ黒なものとなり、小雨はやんで、東山のみねには、かつてこの世へ現わしたこともないような色をした不吉な太陽が、のっと顔を出していた。
「暑くなる」
高氏は、神祇門の下で、悠長にも、大よろいを解いて、よろい下着を一枚脱いでいた。
「兄者。お綿入れは脱がずにおいたほうがいいでしょう」
「なぜ」
「矢防ぎになりまする」
「あたる矢なら――」と高氏は笑った。「のど首へでも、真額にでも中るだろう。大事ない、大事ない」
「いかさま」