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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
それへ勝手な教義や荘厳を加え、宮中でおすすめしているばかりでない。文観の名をうたって、彼の弟子どもが関東にくだり、武蔵野の立川とやら申す所に邪教の道場をひらき、それがまたおそろしい勢いで世間の若い男女のあいだにひろまっているとも近ごろ聞いておる」
「つまり淫祀邪教と仰せられますか」
「もちろんだ、さもなくて、わずかなまに、立川流などと申すいかがわしき教義が、そうそう燎原の火のごとく世俗の中に弘まるはずはない。ま、とにかくそんな坊主なのだ、あの今道鏡は」
よほどソリの合わない仲とみえる、忠顕の口にかかっては、さしもの朝廷僧文観も、密教の邪淫の秘法を後宮に行う破戒堕落の悪僧にすぎぬとばかり、あたまからくそみそな評価なのである。
だが?
と、聞きての道誉には、まんざら、そうばかりとも思えない。宮廷内のあつれきも相当ひどいものと聞いている。たぶんにそれらの感情もあるだろう。
これほどな世の革新を、ともかくも実現したみかどである。准后の廉子にしろ、賢すぎるくらいな女性だ。文観の宗旨がたんなる邪教や愚昧な説法にすぎぬなら、それにたばかられるはずはない。何か、その教義には新味があるか、べつな魅力があるのであろう。