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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

その中の一人に肩を蹴られて尊氏はまたもや石段をまろばった。しかし彼を跳びこえた者はハッとしたらしく、

「やっ。大殿ですか」

と、すぐ駈けもどり、さらに一ばい大きな声をして、あたりへどなった。

「やはり大殿であったぞ。ただしお怪我はない、お怪我はないっ」

尊氏は、起つやいな。

「石堂か」

「は。石堂十馬です」

「ここはいい。逃げたやつを逃がすまいぞ。法師頭巾の大男と、ひとりは膝行袴の侍だ。取り逃がすな」

「ごめん」

と、十馬もすぐ追っかけて行った。――が、尊氏はからだの痛みをおぼえてか、位置そのまま石段に腰をくずしてしまった。

まもなく、石堂十馬、畠山五郎、仁木於義丸、そのほか、尊氏の他行にはつねに随参している若党輩が、ひとりの男をとりかこんで坂下からもどって来た。だが、もひとりの大法師のほうは、ついに捕まえ損ねたらしくみえる。

今夜の奇禍を、彼は、

「口外するな」

と、供の者へ口どめした。

仁木於義丸らの若党たちは、今夜も主人尊氏は、山上の宝塔院に宿直と聞かされていたのであった。

ところが、ほかの武将連はみなそれぞれの宿坊へひきあげたと知り、あわてて迎えに行ってみると、はや尊氏は退出したとのこと。