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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

兵は三、四百ソコソコしか辺りに見えない。支離滅裂だ、まだ迷っている兵もいようが、ひとまず、これがすべての味方である。

「元々、むりな戦だった。敵はこっちの数の十倍といってもきくまい。ぜひないことだ。一時、鎌倉をくれてやろう。そして、三河の矢矧まで退き、ちと面目ないが、兄上(尊氏)のおさしず如何あるか、生きるも死ぬも、それを待っての上としようではないか」

「よう、ご分別を」

と、かたわらの細川和氏が同意をよせた。

「もし、ここで斬り死にせんなどと仰せ出られたら、和氏は大いに笑うつもりでおりました。ここまで戦いぬいたものを、まだ都の援軍もつきませぬ。何の不面目。尊氏さまとて、お叱りはできますまい」

あたりには、彼のほか、吉良宮内大夫貞家、仁木四郎義長、武田孫五郎時風、長井大膳、河越高重など、手負いは多いが、数十の部将がいる。それらもまた、

「ざんねんだが」

と言いつつも、鎌倉放擲に一致した。

だが、鎌倉はすてるにせよ、放擲できないものがある。

さきに直義が奉じて下向した成良親王はぜひにお連れ申し上げなければならない。いやそれと、尊氏の子の千寿王や、みだい所の登子もいるのだ。