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やそうざっき・やちょうざっき
野草雑記・野鳥雑記
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《野草雑記・野鳥雑記(やそうざっき・やちょうざっき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,016 字 · 284 頁
元からあるものは一応は元からあったと認めるのが自然だ。そうするとこの草が久しく注意せられず、もしくは注意する者があっても地方的で、これに全国倶通の名を生ずるに至らなかったと解して置いて、舶載の証跡の後日出て来るのを待つより他はあるまい。自然と文学という問題は、この方面からも一度は近よって見る価値がある。奈良や京都の郊外にタケニ草の繁茂する機会がなく、たまたま繁っていてもそれをただけうとしと感じて、来て見る文筆の士もなかった限りは、記録に伝わるような本名は生れようがない。そうして記録の天然は人も知る如く、甚だしく狭隘であったのである。花ならば梅桜あやめに菊、鳥獣なら鶯時鳥猪に鹿、まるで近頃の骨牌の絵模様が、日本の自然文学の目録であったというも誇張でない。これは風雅の選択が厳峻を極めて、些しく俗気のあるものは吟詠の料としなかったためのように、千年の長きにわたって解しつづけていたのであるが、そればかりは何分にも信じられない。現在の文士などはもう大分自由なのだが、それでなお我々の間には、油絵に静物がもてはやされる程度に、咏物の詩は起らないのである。一つには歌の詞形の短かいためもあろうが、主たる理由は一言でいえば知らなかったのである。