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やそうざっき・やちょうざっき

野草雑記・野鳥雑記

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《野草雑記・野鳥雑記(やそうざっき・やちょうざっき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,016 字 · 284 頁

青空文庫

こういう家々の正月が、いかに晴々と心の改まるものであったかを考えると、自分たちの年始状と初刷との中に、ごろんと寝ころんでいるような新年の、徒然なものであることに始めて心づくのである。

私の家などは町から五里、隣は枯薄の空屋敷であって、どの窓からも一本ずつ、かなり大きな松の樹が見える。海からさほど遠くないためか、空が真青で折々通って行く雲が、洗ったように白く光っている。そういうさっぱりした日影の下に坐っていても、何だか物が一つ足りないような気がするのは、考えて見ると鳥が来ないからであった。鳶もここへきてから三度目の冬になるが、まだ一度も舞っているのを見たことがない。こう毎日のように立川の大先輩が、えらい音を立てて飛んで来る時代になっては、幾ら頃合の林の木があっても、巣を掛けて住もうという気にはなれぬのであろう。そうすれば一つ舞ってやれというような、威勢のいい鳶もこの辺にはいないはずである。

烏はそれでも岡の下の、田の苅跡まで行くと見られぬことはない。晩方には大急ぎで、黙って遠くの方へ飛んで行く一群を見ることもある。しかしいかなる明け方に眼を覚まして見ても、ついぞ一回も烏が啼くなと思って聴いたことがない。