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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

――あんな隠し芸があるとは知らなかったよ」

平次はヒョイと手を出しました。しゃんとした足取り、顔の色も、身体の安定も、日頃の平次と少しも変りません。

「浅黄の手拭に曰くがあるだろうと思って、一本持って来ましたよ。そうでもなきゃ、親分はいつまで番頭とやり合っているか解らねえ」

ガラッ八は懐から浅黄の手拭を一と筋、のし紙に包んだままのを出しました。

「手前の指先の働きを見屈けたから、俺は番頭に絡むのを切上げたんだ。大した腕だぜ八、岡っ引よりあの方が柄に合やしないか」

「冗談でしょう。――ところで、親分は酔っちゃいなかったんで?」

ガラッ八は先刻から、打って変った平次の様子が不思議でなりません。

「本当に酒を呑んだのは、吸物椀と盃洗と、吐月峰さ」

「ヘエ――」

「俺は三猪口とは呑んじゃいねえ」

「すると?」

「間抜けだなア。――あの家を、不思議だとは思わなかったのか、手前は?」

「ヘエ――」

ガラッ八にはまだ解りません。

「冒頭から、話そう。――第一番に、入口の輪飾りが引っくり返って、裏の方を見せていたろう」

「ヘエ――」

「縁喜物を裏返しに掛けるあわて者がどこの世界にあるものか――空樽を踏台にして、やっと手の届くところだから、子供のしたことじゃねえ」