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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

銭形平次の前に、八五郎はもうすっかり恐れ入っております。

「曲者が伊三松とは知らなかったよ」

「からかっちゃいけません、親分」

ガラッ八は耳の後ろを掻きながら、何やら気に済まぬ様子で、平次の顔ばかり見ております。

「伊三松は鼻の先を摺り剥いて大むくれさ。石原の兄哥も言っていたよ、――御親切は辱けないが、同志討は困るって――」

「親分、そんな事より、私にはどうも腑に落ちない事があるんだが」

「なんだえ、腑なんぞに落ちた例のねえ手前じゃないか」

「笑っちゃいけませんよ、親分」

ガラッ八はまだ迷っております。

「先刻から笑ってなどはいない積りだったが」

「真顔で冷かされるから、なおかなわねえ」

「贅沢だな、――笑っていかず、真顔になっちゃいかずと言うと、俺に泣いて見せろとでも言うのか」

「ね、親分、真面目に聴いて下さい。私は、――こんな事を言うと、笑われると思って黙っていたんだが、昨夜曲者が逃げる時、頬冠りを剥いだはずみに、ほんのちらりと顔を見ましたよ」

「何だと?」

平次は急に真顔になると、ガラッ八の方へ向き直りました。

「そんなはずはないと思うから、黙っていましたが」

「その曲者は誰だ、――言ってみるがいい」