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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

お勝手から裏へ出ると、浅い釣瓶井戸があって、物置があって、その裏に埃溜がありますが、どんなに念入りに捜したところで、菓子の片らも見付かることではありません。

平次はグルリと廻って、狭い路地を、鎌倉河岸のお濠の方へ出てみました。

「おや?」

平次はお濠端の草叢に眼を落しました。水際から畳み上げた石垣の上に、踏み残した草が生えて、その草の中に、菓子の粉と見れば見られる物が落ちていたのです。

外濠と言っても三十六見附の役人の目があって、今日のように、無暗に埃などは投り込めなかったのですが、丸橋忠弥が石を投り込んだ内濠と違って、二十や三十の乾菓子なら、夜陰ひそかに投り込めないことではなかったでしょう。

平次はそのまま家の中へ引返しました。朝から出入りした者と、お勘の親元、身元引受人などの名、所を訊くと、それを一々書き止めて、さて、改めて源太郎に向いました。

「十次郎様を害めた下手人は、きっとあっしが捜し出すが、その前に小堀家の宝物――遠州流秘伝書と、東照公御墨付を渡して貰えないだろうか」

歯に衣着せぬ直談判を始めたのです。

「銭形の親分、お気の毒だが、小堀家の宝物とやらを私は知るわけはない、――それよりかお主殺しの悪党を先に見付けて下さい」