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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

縁談には面白くないことですが、後のところは若旦那が、何とかして下さることでございましょう」

与次郎は、金五郎の純情に委ね切って、娘の幸福を疑う様子もありません。

「安心するのは早かろうよ、まだ香炉が出たわけじゃないからな――」

平次は、しかし、釈然とした様子もありません。

「ヘエ――、すると、どんなことになりましょう? 親分さん」

「香炉が出てこなきゃ、玉屋は申訳が立つまい。大名一軒に瑕瑾が付くか付かぬかの騒ぎだ」

「ヘエ――」

「金にも宝にも代え難い品だというから、玉屋の身上を振っても追っ付くことではない。主人が腹を切るか、曲者を捜し出して成敗するか、――しばらくは祝言どころの沙汰ではあるまいよ」

「ヘエ――」

与次郎の顔には、ありありと失望の色が読めます。

「ところで、ほんの念のためだ。十手捕縄に物を言わせるわけじゃないが、――家の中を見せて貰いたい」

「ヘエ――」

不満らしい響きが平次の心を焦立たせます。

「玉屋も念入りに調べ、奉公人の荷物もみんな見せて貰った」

「香炉はございませんでしたか、やはり」

「無い」

「それじゃ致し方がございません。存分に御覧下さいまし」