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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十四)雛の別れ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,139 字 · 233 頁

青空文庫

「気に染まぬことがあって、親類に預けてある」

「御親類とおっしゃると?」

「牛込御納戸町の河西源太殿」

高木勇名はこれだけ言うのが精いっぱいです。何か容易ならぬ心の苦悩がありそうです。

いい加減に切り上げて路地の外まで出ると、後ろからバタバタと追って来たのは、娘の茂野でした。

「あの、もし」

「お嬢さん、何か御用で」

平次は蟠りのない調子で迎えます。

「父はあの通りの容体で、寝返りも自由にはなりません」

「よく解りましたよ、お嬢さん。あの容体じゃ、どう間違っても外へ出られるはずはありません。御安心なさいまし」

「有難うございます」

茂野は慎ましく黙礼して、自宅の方へ引返しました。

「良い娘ですね、親分」

ガラッ八はしばらくその後ろ姿を見送ってから、思い出したようにこう言うのでした。

「お松とどうだ」

「お月様とすっぽんで、――育ちが違いますよ」

「すっぽんは喰いつくと雷鳴がなるまで離れないというぜ。気をつけるがいい」

「喰いついちゃくれませんよ」

「なさけない事を言うな」

「そういえばお松はどうなったでしょう。すっぽんでも亀の子でも縛られちゃ可哀想じゃありませんか」

「そうそうお松の縄を解いてやるのが目あてだったね。