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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十四)雛の別れ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,139 字 · 233 頁

青空文庫

「お鈴が死んで間もなく入れました。そういえば変ですね」

久助は今ごろ首を捻っております。

「八、来い」

平次はもう飛び出しておりました。

「どこへ行くんで親分」

「お前遠っ走りは出来るか」

「向柳原へ飛ぶんでしょう」

「馬鹿、向柳原ならここから五丁ともありゃしない。――島吉の後を追っかけるんだ」

平次はもう七三に尻を端折っております。

「越後まで行くんですか、親分」

「鎌倉だよ。まだ分らねえのか」

「ヘエー」

「あの島吉というのは、琢堂の倅の道楽者さ――丈太郎とか言った」

「ヘエー」

「ほとぼりがさめたと見て京屋を逃げ出したんだ。行先は分っているじゃないか、親の墓のある鎌倉だ」

「なるほどね」

二人は半分は駆け、半分は駕籠で、その日のうちに鎌倉に入っておりました。

「ここですよ、親分」

八五郎が一度来た琢堂の庵は、宵闇の中に堅く閉されて、人影がありそうもなく、四方は、松原で、人に訊くすべもなかったのです。

「ゆうべ京屋を出て、どこかで夜を明かせば、島吉の丈太郎が鎌倉へ着くのも早くて今夜だ。少し待ってみようか」

平次は松の根に腰をおろして、煙草入を抜きました。遠く波の音が聴えて、潮の香に煙草の匂いの交るのが、妙に八五郎の郷愁をそそります。