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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

押し揉まれながら迷っていたのは、笠を首にかけた待乳の多市、片手で人を防いでいるが、片手は懐中の前を離さない。

親分の銀五郎は、今日も蜂須賀の蔵屋敷と下屋敷の方へお百度詣りだ。例の、阿波入りのため、便乗する関船手形、入国御免切手、二つを手に入れなければならないので。

願書を出す、身元がいる、五人組証明をとられる、白洲で調べをくう、大変な手数。元は関船手形だけですんだ。こう厳密ではなかった。それにはわけがある。阿波の鎖国、徳川幕府の凝視――。だから銀五郎の用があった、押しても渡りたい密境だった。

埒があくまで、多市は用なし、「たまにゃブラついて来い」とおっ放されたが、懐中にはちょッと重目な預り物、後生大事にかかえているので、肚から楽しむ気になれない。

「おっと、それどころじゃねえ」すぐ性根になった。「この大金、もしものことがあった日にゃ、お眼がねで供をしてきた正直多市がどうなるんだ」とうとう南京手品を諦めて歩きだした。

そして、西重門の側へ寄ろうとすると、楼門の内から、ゾロゾロ吐き出されてくる参詣人の中で、

「アー」と軽い叫びがする。

ひょいと見ると、上品づくりのお嬢様。