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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁
「あ――」万吉が、話の中途で、躍り上がるばかりに指さした。
「旦那、来た来た、たしかにあれですぜ。ほら、ほら、白い矢でも飛んでくるように、一気にこちらへ向いてくるじゃありませんか」
「おお」その指さきの空に、一点の影、舞い下りてくる小鳩を見出したとみえ、一八郎も、眉から憂いのかげを払いつつ、
「戻ってくれた、戻ってくれた、手飼の密使――」ハタハタという音さえ嬉しく聞いて、拳を出していると、馴れきっている銀色の家鳩、スーと下がってきて、その手へ止まった。
「大儀、大儀」
足に結んである雁皮紙を解いてパッと離すと、鳩は今宵の塒をさがすのか、ふたたび、木立の中へ隠れてしまう。それを見届けてから、一八郎は、細く折りこんである薄紙をていねいに開いて、
「ちと暗いのう……」と、読みなやんだ。
「お待ちなさいまし、手軽い篝をこしらえますから」万吉は、少しばかりの枯杉をあつめ、燧ぶくろの道具をだして、カチ! カチ! と火花を磨りつけた。
ポウと、燃えついた明りへ寄って、俵一八郎は雁皮紙の密書へ目をたどらせる。それは、かねてから蜂須賀家に住みこませてある一八郎の妹、お鈴からのものであった。