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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁
「えっ、お千絵様のお屋敷へ?」
「そうじゃ。銀五郎のかたみとなったこの髪の毛を持って、お千絵殿に会った上、仔細残りなく話してくれい。そして、いずれこの弦之丞も追っつけ江戸へまいるであろうとな」
「蔭ながらわっしもいろいろ伺っております。そう申し上げたなら、さぞお喜びでございましょう」
「しかし、それもごく密々に――本来江戸へは帰れぬ事情のあるこのほう、必ずとも他人の耳には触れないようにな……」
「そこに抜かりはございません。じゃ、わっしは行きがけに大津絵師の半斎老人の所へ寄って、何かの詫びや礼をすました後に、その足で江戸表へ急ぎます。ところで、あなた様と江戸で落ち合える段どりは、およそ何日ごろになりましょうな」
「まず二月か三月ほど後であろう」
「たいそうお手間がとれるんですね」
「聞けば、近いうちに蜂須賀阿波守は、卍丸をしたてて徳島城へ帰国いたすとある。安治川尻の下屋敷の様子、その取りこみに紛れてザッとうかがってくるつもりじゃ。さもなくては、お千絵殿に会ったところで、充分この後の諜し合せがつかぬからのう」
「へえ……」といったが、万吉は相手の顔をけろりと見ていた。