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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

有村は叱りとばして、

「今宵は、この亭の近くへ、何人たりとも近よるなと申しつけてあるのに」

「はっ、私は、その庭番の者にござります」

「いよいよ不埒ではないか、警固すべき者自身が、お席を騒がしては何もならぬ」

「重々恐れ入りました」

「退れ退れ。御前へは身が取りなしてくれる」

「しかし、なおもう一応、お庭内をあらためませねば、そのお役目が立ちませぬので」

「何故※(感嘆符疑問符、1-8-78)」

「先頃から、奥牢へ入れてあります俵一八郎という天満浪人」

「ウム、大津より差し立てきた一八郎。それがどうした」

「いや、その浪人は牢舎中も、きわめて神妙に致しておりますが、外よりして、しきりに牢へ近づこうとする者がござります」

「奇怪なことを申す、すりゃまったくか」

「今も今とて、何気なく見廻りましたところ、吾々の眼を偸んで、怪しい影が奥牢の戸に近づき、何やら声をかけようとしておりますゆえ、思わず、待てッ! と厳しく追いかけましたが、たちまち影を見失い、ツイ御座所近くになるのも忘れて、この不始末をつかまつりました」

「役目の忠実、こりゃ咎める筋はなかろう」と、三位卿は数寄屋の縁から阿波守のほうへ向いて、