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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

と川の中から三次がいう。

「目明しを一匹召捕ったのだ。住吉村へつれていって、四、五日飼ってみようと思ってな」

「何だ、つまらねえ真似を……、鈴虫なら啼きもするが、目明しなんざあ可愛らしくもねえ。いッそ川の中へ蹴転がしてしまいなせえ」

「まアいいわ、手先や同心の内幕を聞くのも慰みだし、第一お前の渡世のためだ。ところで三次、今夜おれはいろは茶屋で泊まるから、こいつを乗せて先に帰ってくれないか」

「いい心掛けにはなりてえものだ。お人よしの三次を放って、いろは茶屋のお品とたくさんふざけておいでなさい」

「妬くなよ、明日は早く帰るから」

「まア体だけをお大事に」

「ばかにするな、はははは」と、孫兵衛、くすぐったい笑いを残して、雪踏の音、チャラリ、チャラリ……と闇に消える。

その晩から、万吉は、森囲いの怪しい家、住吉村の三次の住家へ監禁された。縄目を解かれてほうり上げられた所は、屋根裏を仕切ったような空部屋である。夜が明けて、鉄格子から流れこむ光に見廻すと、太い綱、帆車、海図などの船具や鉄砲などが天井裏につまってある。

「あ! ここは荷抜屋の巣だな」と万吉は眼をみはった。荷抜屋というのは、御禁制の密貿易をやる輩のことで、年に一度か二年目ごとに、仲間で集めた御法度の品を異国船に売り込むのが商売。