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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

関の時雨堂から、ここへ囚われて来てより早百日、肩骨張って色青白く、めっきり痩せ衰えてみえるが、意気は軒昂。

晃々たる菊の間の燭へ正面を切ッて、臆する色もなく重喜の面を見上げた。

見下ろす眸と一八郎の眸、カチッと絡み合ったまま、互いに睨みすえながら無言の争闘ややしばらく……。やがてのこと阿波守、

「その面構えでは、問うても容易に口を開くまいが」と、前置きしてほたる斬りの切ッ尖を、廊下の上から突き向けた。

「余が下屋敷へ、汝の手から住み込ませた同腹の女があろう。ここに居並んだ奥仕えの女の内にその廻し者が潜んでいる筈。有態に名を明かさば、命だけは助けてつかわそう」

耳うるさし、というふうに、一八郎は眼を閉じたが、その時、廊下に並んだ侍女の三人目に、十六、七かと見える丸顔の少女、首を垂れてブルブルと肩骨をふるわせた。

「面倒じゃ! 痩浪人を荒蓙へのせて水の用意ッ」阿波守が呼ばわると、「はっ」と庭先にいた天堂一角や番士たち、あわただしく働いて、瞬間に成敗すべき死の座を作る。

「御用意、整いました」

一角が庭下駄を揃えると共に、ほたる斬り信国を引っ提げた阿波守、ズカリとそれへ足を進ませるかと思うと――。