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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁
「まず、ゆるりと、考えてみた上にいたそう」
「いかにも、安受け合いは頼もしくない、どうぞごゆるりと、算盤をとってごらんなさるがよい」
「なかなか念入りなお頼みだ」
「どうして、こちらでは、これでも至って、手軽な注文をつけたつもりなので……」と銀延の煙管をだし、行燈の灯口から、周馬は、すぱりと一服吸いつけながら、
「それをご承知下さるなら、鏡の裏へ落ちこんだお綱の体は、このほうが必ずお渡しいたすであろう。嫌と仰せあらば、それまでのこと、まず物別れとなるよりしかたがありますまい。したがって、お綱の生死、この周馬には責任もなし、或いは、妙な依怙地になって、かえって、女の味方になり、よそへ逃がしてしまうかも知れませんて……とかく人間というやつ、その依怙地のほうへ曲りたがるものでしてな」
独り言のように、そそのかしたり、おびやかしたりするのである。
お十夜のような曲者を、こう呑んでかかる旅川周馬には、邪智に富んだ一面があって、たえず、悪心が陰謀的に、また打算的に働く性格をもっている。
それに反して、孫兵衛の質は、慓悍なる一本気で、計画もなく衒いもなく、本能にまかせて、悪を悪とも思わずに、なんでもやってのけようとする先天的なほうであった。