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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

「えらいにもなにも、お話にゃなりませんて」

「いッたい、どこが火元だったのでしょう?」

「さア、そいつはよく分りませんがね、なんでも怪し火だということで」

「怪し火……ふウン、まア魔火でございますな」

「そうでもなければ、あんな宵に、駿河台から外神田まで焼けッちまうなんて、ばかなことはありますまい。おまけに、小川町にはお火消屋敷があるんですからな」

合羽をきた旅の者と、風呂敷づつみを持った手代ふうの男。どうやら話は火事のことらしい。

「ちょッと伺いますが」

舷へあわただしく煙管をハタいて、横から口をだしたのは、とちめんや北八といったような、剽軽な顔をした男である。

「なんですか、どこかに火事でもあったんで?」

「知らないのかい、お前さんは」

「ちッとも。――いったい全体、その火事ってえのは、どこでいつの話なんです」

「ゆうべさ」

「へえ、ゆうべ?」

「しかも大火だ、おまけに目ぬきな神田から駿河台、あの辺のお屋敷町まで、この暮へきて焼け野が原だ」

「とすると――佐久間町あたりは、どんなものでござンしょう」

「まず、たいがい焼けたでしょうよ」

「ば、ばかにしてやがら」

「怒ったってしようがねえやな。