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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

「じゃあ、私も一緒に行きましょうよ」お綱は手早く支度をした。そして、羽織は着ずに、葡萄染の縮緬頭巾をかぶり、火鉢の側の煙草入れを帯に挟んだ。

万吉は、にわかにはずんで、いそいそとするお綱の気持がよく分った。そして、それを拒むことはできないのである。

「お前がお千絵様を救いだしてくれれば、おれも、どんなことでも力を貸してやろうじゃねえか」と、墨屋敷の窓の所で、固く約束したことがある。そのために、お綱は命がけで、あの屋敷の穴蔵部屋へまで身を墜したのだ。よしや今ここに、お千絵が完全に助けきれていないにしても、その約束を破ることはできなかった。

「困ったなあ……」

口には出さないが、万吉は心の底で呻いていた。――とんだ約束をしてしまったものだ――と今さら後悔するのでもあった。

やがて、弦之丞に会った時、お綱から、約束を迫られて、恋の橋渡しをせがまれた時には、さて、どうして諦めさしたものだろう?

実をいうと万吉は、今度のいきさつがあってから、お綱の気性を見込んで、すべての真相を残らず打ち明けていたのである。

だが――たった一つ、弦之丞とお千絵との仲だけは話さなかった。