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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁
「ウーム……これは容易ならぬことじゃ」
息を殺して黙読して行くうちに、家治は強い衝動をうけた。今、柳営の春は和光にみち、天下は凪のごとく治まっていると思いのほか、いつか西都に皇学の義が盛んに唱えられ、公卿と西国大名の間に、恐るべき叛逆の密謀が着々として進んでいるというのは、なんとしても彼だけには、不審であった。
しかも、弦之丞の上書には、歴然と、それが箇条書きに並べられてある。そして、蜂須賀阿波守がその反幕府派の盟主であることが、指摘されてあった。
阿波第一の不審は、十年前から、領土に他国人を入れぬ制度をとったこと。
第二は、安治川の船屋敷で、堂上公卿たちとしばしば密かな会合を催すこと。
第三は、宝暦変の時に、倒幕の先鋒であった竹屋三位卿が、幕府の目をくらまして失踪の後、いつか同家の食客となっていること。
等、等、等、いろいろ家治の心胆を驚かさぬものはない。さらに、別札には、それについて、弦之丞の目的である、一通の嘆願書がそえてあった。
願書は、甲賀家の私事に筆をおこしている。
今から十一年前に、その内秘をさぐるため阿波へ入国した世阿弥の顛末。また、その一子が女であるため、昨年改易されて甲賀家のたえたことを誌し、最後に、自分は仔細あって、阿波守の身辺に接しもし、また世阿弥の所在を知りたいこともあるので、