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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

「泣くンじゃない、泣くンじゃない」

と、菓子や食べ物を持ってくる者があるし、

「心配おしでない、今夜は、わたしが側にいて、面倒をみてあげるから」と、吾家をほうって、泊りにきてくれるお婆さんもある。

苦悶のあとは昏睡に落ちて、この界隈で鼻つまみなあぶれ者も、息の細りとともに断末へ近づいてゆく。

「もう、駄目でしょうよ」

と、怪我人のほうへは見きりをつけて、あしたは早速、虎五郎の枕元で、長屋の誰彼三、四人がヒソヒソと善後策の相談。まず何よりの問題は、お葬式の費用であった。

「しかたがありませんから、町年寄へ泣きついて、いくらかお慈悲を仰ごうじゃありませんか」

「駄目駄目。およしなさいよ」

「虎さんじゃネ――なにしろ、可哀そうだと、いってくれる者はありますまい」

「ひどい悪者で通っているから――こんな時には」

「じゃ、長屋の衆に、もう少しずつ泣いて貰って、棺桶と線香代……」

「お寺は?」

「箕輪の浄閑寺、あすこの、投込みへ、無料で頼むよりしようがないでしょう」

「浄閑寺の投込みは、廓の女郎衆で、引取り人のない者だけを埋葬する所。地廻りの無縁仏まで、ひきうけてくれるでしょうか」